(1) 草譜の譜(博士/博士)は字句の右側に付されたものを見ます
『正信偈』の本を見ると、字の左や右に譜(墨で書かれた線)が付けられていますが、これを「博士(はかせ)」といいます。「墨譜」とも書きます。草譜の場合、字句の右側の博士を見ます。4句目の「在世自在王仏所」の「王仏所」に初めて博士が登場します。
途中、46句目の「中夏日域之高僧」や「善導独明仏正意」以下は左側に博士が書かれていますが、草譜の場合は右側の博士を見るのですから、これらは無視します。
(2)『正信偈』は、初めから終わりまで「拍」にしたがって唱えます
草譜の場合、漢字1字対して拍が割り当てられており、基本的に次の規則に従います。
| 下記以外の漢字1字 | 1拍 | ・下記以外の漢字全て |
| 右に「引」がある漢字1字 | 2拍 | ・各句の最後の1字(2個所に例外) ・「是人名分陀利華」の「名」 ・「中夏日域之高僧」の「中夏日域」など |
右に「引−火」または「引」と 漢字間に「−」がある漢字2字 | 1文字目 1.5拍 2文字目 0.5拍 | ・「超発希有大弘誓」の「希有」と「大弘」 ・「如来所以興出世」の「所以」 ・「常覆真実信心天」の「常覆」など |
| 例外 | 1句目 | 「帰命無量寿如来」の「来」 | 3拍 |
| 最後から4句目 | 「弘経大士宗師等」の「等」 | 4拍 |
| 最終句 | 「唯可信斯高僧説」 | 拍なし |
『正信偈』は、初重の念仏の4句目(調声人は3句目)までは無本で(本を持たずに)唱えることになっています。しかし、最初から無本というわけにはいきませんから、リンを打つ前に両手で本を戴いて開いて胸前に保持しますが、この時に右手の人差し指で軽く本をたたくように拍をとるとよいでしょう。
(3) 「帰命無量寿如来」から「至安養界証妙果」で使われる音階と出音
草譜の「帰命無量寿如来」から「至安養界証妙果」使われる音階は、壱越(ハ調レ)・神仙(ハ調ド)・黄鐘(ハ調ラ)の3つで、壱越(ハ調レ)が基準となっています。
そして、「帰命無量寿如来」の「帰」の出音は、壱越(ハ調レ)です。壱越のリンの場合は、リンの音を拾って出音します。
(4) 「帰命無量寿如来」の「来」は3拍で、二字仮名を軽くつける
1句目は調声人が独唱しますが、「帰命無量寿如来」の「来」は拍のきまりの例外で3拍となります。「ら」が1拍、「い」が2拍です。
| 帰 | 命 | 無 | 量 | 寿 | 如 | 来 |
| き〜 | みょ〜う | む〜 | りょ〜う | じゅ〜 | にょ〜 | ら〜 | い〜〜 |
| 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 2 |
また、「命」は「みょ〜う」、「量」は「りょ〜う」と、必ず「う」を軽くつけます。つまり、「帰命」が「きみょ〜」になったり、「無量」が「むりょ〜」になってはいけません。この読み仮名の二文字目の文字を「二字仮名」といいますが、2句目以降も同じで必ず付けるように心がけて下さい。
(5) 同音は調声の声にかぶせて入る
「来」は3拍で、4拍目より同音が「南無不可……」と入るわけですが、厳密にいえば調声人は「来」を3拍より長くのばして唱え、同音がこの4拍目より調声人の声にかぶせて「南…」と入ります。
(6) 1句毎に「息つぎ」をする
「息つぎ」は1句毎に行います。毎句最後の文字は2拍ですが、2拍いっぱい延ばさず、1.5拍ぐらいにして、残りの 0.5拍で息つぎをします。従って、1句毎に声が途切れて息つぎが入ることになります。
ただし、1句目の調声は同音がつくまで延ばすので例外です。
また、40句目の「是人名分陀利華」の最後の「華」も例外で、「華」は1拍で、しかも息つぎをせずに次の句「弥陀仏本願念仏」に続けます。この部分については、後ほど説明します
(7) 4句目毎に最後の3文字を下げる
4句目の「在世自在王仏所」は、「王」と「仏」を神仙(ハ調ド)に下げ、最後の「所」を更に黄鐘(ハ調ラ)まで下げて唱えます。ハ調の音階でいえば次のようになります。
以下、4句目毎はこのように終わりの3字を下げて唱えます。4句目毎に下げるので、草譜のことを「四句目下り(しくめさがり)」ともいいます。
(8) 「引」と「−」がついている個所は、1拍半と半拍で唱える
「超発希有大弘誓」の「希有」と「大弘」には、1字目の右に「引」とあり、文字と文字の間に「−」がつけてあります。本によっては2文字の右に「引−火」とあるものもあります。ここは「火急(かきゅう)」という唱え方をします。1字目を1拍半、2字目を半拍で唱えます。
この「超発希有大弘誓」は4句目にもあたりますから、(7) の四句目下りにも唱えなければなりません。
(11) 「至安養界証妙果」の最後は次第にゆっくり
「至安養界証妙果」の拍は次の通りですが、中ほどより次第にゆっくりとなり唱え終わります。
| 至 | 安 | 養 | 界 | 証 | 妙 | 果 |
| し | あ〜ん | にょ〜う | が〜い | しょ〜う | みょ〜う | か〜〜ぁ |
| 1 | 2 | 2 | 2 | (2) | (2) | (2) |
(12) 調声人は、双調(ハ調ソ)で「善導独明仏正意」を出音する
これまでの壱越(ハ調レ)から一気に双調(ハ調ソ)まで2音半上がるわけですが、どれだけ高くするかは耳で覚えるしかありません。何度も正しいおつとめを聞いたり、ピアノやオルガンを使って練習を重ねると、そう難しいことではありません。
ここは2回目の調声人の独唱となりますが、調声人は「至安養界証妙果」の「果」を全員が唱え終わってから出音します。調声人が助音の声にかぶせて出音することはありません。
拍は、(4) の拍のきまりどおりですから次のようになります。
| 善 | 導 | 独 | 明 | 仏 | 正 | 意 |
| ぜん | ど〜う | どく | みょ〜う | ぶっ | しょう | い〜〜 |
| 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 |
(13) 同音は調声の声にかぶせて「矜哀……」と入る
「意」は2拍で、3拍目より同音が「矜哀定散……」と入るわけですが、厳密にいえば調声人は「意」を2拍より長くのばして唱え、同音がこの3拍目より調声人の声にかぶせて「矜…」と入ります。(5) の最初の同音の場合と同じです。
(14) 四句目下りはなく、字の右の「下」に従い、「ワル」読み方はしない
「善導独明仏正意」からは四句目下りの唱え方はしません。そのかわり漢字の右上に付けられた「下」に従って唱えます。本によっては「下」の文字は「○」で囲まれていたり「下ル」となっています。
この「下」は、その文字からその句の最後の文字までを壱越(ハ調レ)に下げることを意味します。「開入本願大智海」の「本」に初めて出てきます。
また、行譜では「開入本願大智海」の「入」は「ワル」読み方をして「にう」と発声しますが、草譜の場合は「ワル」読み方はしません。
「開入本願大智海」の「開入」と「本願」には「引」と「−」がついていますから、(8) で習った火急の唱え方も含まれています。次のような音階と拍になります。
| 開 | 入 | 本 | 願 | 大 | 智 | 海 |
| か〜い | にゅう | ほん | がん | だ〜い | ち | か〜〜い |
| 1.5 | 0.5 | 1 | 1 | 1.5 | 0.5 | 2 |
| ソ | ソ | レ | レ | レ | レ | レ |
そして、次の行頭には「下」がついていないので、もとの双調(ハ調ソ)の高さに戻ります。
このように